相場心理
相場を動かすブルの心理、ベアの心理
自分の投資方法を見直したい人、特に下げ相場やネットバブルで痛い目にあった人に役立つ本。これから投資を始める人にも役立つが、実際に痛い目にあってからの方が納得がいく。著者は、銘柄選びの情報を提供する本ではなく、自分を知り、自分がどのようにリスクを受け止めているかを理解するための本と述べているが、実際、銘柄の探し方やチャート解説本より得るところが多い。 前半部分を中心に、フロイトをはじめとする心理学者の研究を織り交ぜながら、投資行動の解説が行われている。株を手放せないのは、状況が悪化すると都合の良い情報しか受け入れない「認知的不協和」によるという説明は、自らの投資経験を省みて思わず苦笑してしまう。ほかにも、偶然のできごとさえ意のままに操れると錯覚する「コントロールの錯覚」、「ドライ株とウェット株」やオンライン取引へのイメージトレーニングの利用法なども心理学的な分析ならではといえる。 さらに、アナリスト、ブローカー(本書では証券会社のセールスの意)、トレーダーの心理状態を分析している章では、その職業に就いている人にとっては手厳しい表現が並ぶ。原因は集団心理や、過度のストレスと多様であるが、けっきょくは自分を見失うと失敗する、あるいはだまされるというメッセージである。 また、灰色ページが3章と5章にあり、それぞれ情報力テストとリスク許容度テストになっているというおもしろい工夫がある。特にリスク許容度テストはかなり充実していて、自分のリスク許容度を詳しく知ることができる。今後の投資を考えるうえできわめて貴重な情報を提供してくれるもので、これだけでも本書を読む価値がある。難点を言えば、イギリスの企業の例が多いこととポンド建ての話が多いことだが、ボディショップなど聞いたことがある銘柄も多く、それほど気にならない。 本書によって集団心理やストレスの影響を知り、「自分のリズムで自分のタイミングで」と「今動かなければ」はない、という2つの投資指南を実行できれば値千金である。(土居践理)